よもやま話
画家 谷口正治
何年か前までセミナー会社を経営していた方が、経営者を引退して画家になった。それを聞いたとき、初めは素人の手慰みだと高をくくっていたが、何回か展覧会に出展した作品を見ているうちに、「これは只者ではない」と思うようになった。
その方は以前セミナーの講師を選ぶ時、候補者となった人の著書やマスコミでの発言などを元に、「その人が今の企業経営シーンにおいて旬なのか」、「世の経営者がこれから求めるエッセンスがあるのか」等を的確に見抜くことに長けており、その会社のセミナーは常に時流の半歩先を行くことで有名だった。
たまに2、3歩先を行ってしまうのか、講師がまったく不評だったこともあったが、その後3年ほどすると、必ずと言っていいほどその時の講師がブームになるのだ。
谷口正治さんというその方は、もともと仕事柄観察眼は極めて鋭く、人やマーケットを見抜くプロだったわけだが、ここに来てそれが再び開花したようだ。特に布やガラス、水などの素材感の表現は抜群で、まるでフェルメールでも見るかのようだ。
また一方で、新しく描いた人物画などを見ると今までの静物画とはまったく違う存在感がある。なんとも不思議な魅力を持った絵なのだ。風景画がまた良い。最近はバックに凝っていて、赤、緑、青などの色を巧みに使い独特の世界を創造している。
まだ作品の数がそれほど無いため、大々的な個展を開くには至らないが、いずれ数が揃ったときにはどこかで開催することになるだろう。まだ画家としては無名なだけに、そのときのまわりの反応が楽しみだ。
絵のタイプはまったく違うが、生き方としてはグラン・マ・モーゼスの日本版といったところだろうか。