よもやま話
ビジョン
経営者に必要な能力はたくさんあるが、特に重要なものは何かと言われればそれは「ビジョン」と「フィロソフィー」だろう。
ビジョンを日本語にすると未来図とか将来展望という意味が一般的だが、他に能力という意味で「未来を見通す力、先見性、洞察力」などがある。
フィロソフィーは哲学だが、他にも「人生観」や「その人特有の価値観やこだわりをもとにしたものの考え方」などの意味もある。
この2つは両方無くてはいけないし、どちらが欠けてもうまく行かない。
簡単に言えば、ビジョンは「なにをやるか」で、フィロソフィーは「どうやるか」とも言える。
今世間を騒がせている菅首相は、一見ビジョンがあってフィロソフィーが無いように見えるが、実は逆で、ビジョン(将来展望)が無くて歪んだフィロソフィー(意地やメンツ)があるのだろう。
私が5年前に「この会社は潰れる」と言った会社ドリームキューブがこの春潰れた。
5年前は飛ぶ鳥を落とす勢いで、社長もマスコミに頻繁に取り上げられ業績も倍々ゲームで来ていた。
その時は潰れるよと言っても誰も信じなかったが、その翌年に最高の業績を上げたのを最後に徐々に業績が悪化し、最終的にやっぱり潰れた。
企業経営を評価するときは、勢いやムードを見るのではなく一つひとつの事実を淡々と読み積み重ねて判断しなければいけない。
占いや予想ではなく論理的な予測なのだ。
その会社にはフィロソフィーはあったがビジョンが無かった。
その社長は、自分の哲学を本にしていくつも出版し、社内には社員バーやビリヤード台を置いて注目を浴びた。
それ自体は確かに面白い発想だったし彼の人生観は十分に感じられたが、最も重要な「社会に対してどうしたいのか」がまったく見えてこなかった。
その会社のやっていたことは決して意味のないことではなく、どちらかと言えば社会に対して必要な業務ではあった。
ただ、その「社会に対する存在意義」の更なる追求を経営の最優先課題にせず、自分の哲学を振り回すことだけに終始したのが致命傷となった。
現代は企業の社会性がますます重要視されている。
マズローの欲求5段階説も最近見直され、「自己実現」の上に「コミュニティーの発展」があるとされており、マーケティングの世界でも社会的使命が以前に増して重要視されるようになっている。
こういう世の中においては、ビジョンを磨き続けなくては企業の継続は難しい。
企業経営にますますビジョンが問われる時代になってきた。