市川人事労務コンサルタント事務所

よもやま話

アーカイブ

よもやま話

ミシュラン

先日テレビを見ていたらレストランを取材する番組があった。

その常連客らしい若い男性がインタビューに答えて、「ここはミシュランの星持ちの中で、一番ランチが安いんですよ。」などと、したり顔で言っているのを見て、「あー気持ち悪い。」と思ってしまった。

なぜそう感じたかは分からないが、とにかく気持ち悪さとある種の恥ずかしさを感じたのだ。
マニュアル通りにしか生きられないのか君は、ということかも知れない。
または、まわりに合わせて調子良く振る舞うことがそんなに楽しいか、という感じなのかもしれない。

なんだ、その「ミシュランの星持ち」という軽さは。
そして、なんだその和食のことも分からぬ外国のグルメ本を無条件に受け入れてしまう分別の無さは。

日本には以前から多くのグルメ本があり、それぞれがなかなかの視点で独自の取材を行っている。
これらの中には読み応えのある面白いものも多いのだが、ミシュランが日本版を出すことになった時、それまでの日本のグルメ本を一蹴する勢いで大変な話題になった。

この時の大騒ぎに私は大変違和感を覚えた。

外国のものを有り難がるのも良いが、良く考えればもうすでに日本は経済や経営等は言うに及ばず、食文化もサブカルチャーも(今や映画も国産の方が良く入っているそうだし)世界に通用するものを持っている。

それが「ミシュラン、ミシュラン」と騒いでいるのがよくわからない。

良かった店がミシュランに載って一年経たないうちに特徴のないただの高級店になってしまったり、特に職人気質のオーダーメード感覚の店が時間制のオートメーション化されたような店になってしまったりしている。

もともとミシュランはフランスのタイヤメーカーである。
この「フランス」というイメージと「ミシュラン」という心地よい響きが、多くの愚かな(と言って良いかどうか分からないが)日本人の心をくすぐって、件の「ミシュランの星持ちの中で・・・」の気持ち悪いセリフに繋がっているのだろう。

これがミシュランでなく横浜ゴムだったらどうだ。
「これは横浜ゴムの星持ちの中で一番ランチが安いんですよ。」などと、したり顔で言うだろうか。
それはそれで気持ち悪いが・・・。

これは、たまたまミシュランの話だが、全てに言えることだ。
馬鹿みたいな話だが、今の日本にはこういうことがたくさんあるように思う。
浮ついた風潮にさして疑問も持たず、安易に同調するのが時流だと思っているかのようだ。

ミシュランの取材を断っている立派な店がある。

そうは言っても、なかなか断ることはできないことなのだろう。
だから余計に思うのだが、まわりの風潮に惑わされないで自分を貫いているその信念を、我々も見習って生きて行きたいものだと思う。