市川人事労務コンサルタント事務所

よもやま話

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人間の器

衆院特別委の国会中継を見た。

与党の追求を受け、菅首相が相変わらずしどろもどろに答弁していた。
ここまで来てもまだ責任回避に血道を上げている。
もっとひどいのは、立場を守るために平気で嘘をつくようになってしまったことだ。
菅直人は末期症状だ。

ポスト(会社で言えば社長や役員や管理職、国で言えば首相や大臣など)にはそれに見合った人間の器が求められる。
器の大きな総理大臣が出なくなって随分経つように思う。

以前にも書いたが、課長クラスの人間にいきなり社長をやらせているようなものだ。
本人も「まだ実力が無いから心配だ」と自分で思いながら周りの力を借り謙虚に努力しているならまだしも、実力も無いのにただやりたがっているばかりで始末に負えない。
総理大臣の責任の大きさなど考えもしない。
安倍、副田、麻生、鳩山、菅などはその典型だ。
情けない限りだ。

企業の経営者も気をつけなければいけない。
特に世代交代の時にその辺りの感覚が大事になる。
能力や器をどう見抜くかというあたりの感覚だ。

今、私の顧問会社でもいくつかの会社で創業経営者が次にバトンを渡す準備をしている。
くれぐれも課長の能力しか無い者を社長にしてはいけない。

創業経営者は特別の存在だ。
能力的にも普通の人とは違う一種独特のものを持っている。
しかし、意外とそれを自分で理解していない人が多く、自分と同じものを後継者に要求してしまうところがある。
それが承継を難しくしている一つに理由でもある。

また、創業者は癖がある人が多いから、周りからは評価されるが自社の社員からはその能力を正しく理解されていないことがある。
これは、自分の中での優先順位がはっきりしており、それに向かって強引に(または黙々と)行動する割にいちいち手取り足取り社員に説明したがらないところが影響している。

これはある意味では仕方がないことだが、それを避けるには身近に社長のことを良くわかっていて味方をしてくれる人材を置いておくのが一番良い。
それによって経営者が何を考えているかが少しずつ社員に見えてくるようになる。
創業経営者の本当の凄さが社内で正しく理解されていないというのは(実は意外と多いのだが)、その企業にとって大変な損失なのだ。
大変もったいない。

まあそれは良いとして話を戻すと、一番の問題は次を誰にやらせるかだ。
ここで良く間違える。

ここで別の問題としてあげられるのが、意外なことだが創業経営者は人を見る目がない人が多いことだ。
私も最初はそれが不思議だったが、長年いろいろな経営者と付き合ってみて段々と分かってきた。

創業経営者はずっと自分が物事の中心にいて、自分が見られる立場で戦ってきた。
常に外を向いて戦っており、社員に関わっている暇がないままに業績を上げてきた。

また、社員を観察する習慣がないことに加え、創業経営者は純粋で人を信じやすい。
明快で裏表が無いからつい思い込みで人を見てしまう。
いわゆるハロー効果というやつだ。
これは創業経営者特有の弱点かもしれない。
商売の相手を見抜く力は並外れてあるのに、社員を見抜く力は意外と無いのだ。

一方社員はどうかと言えば、最初は皆創業者と同じ感覚で寝食を忘れてやっているが、少し業績が安定してくると経営者との間に感覚のズレが生じてくる。
経営者は変わらなくても社員が変化する。
社員の方が複雑なのだ。

そこから溝ができる。

その溝に、社員は皆気付いているが社長だけ気が付かない。
こういうことが多いのだ。

ここで気をつけなければいけないのは、このあたりから表裏を使い分ける社員が出てくることだ。
会社にもよるが、早ければ創業して3年も経てば大体こうなる。

経営者は人を見かけや自分に対する言動だけで判断してはいけない。
皆社長に対しては良い自分を演じるものだ。
全ての社員を冷静に見極める必要がある。

特に後継者を選ぶ時は、総理大臣もそうだが「やりたがっている者」より「やれる者」を選ぶべきだ。
つい専門能力や論理的思考力ばかりに目がいってしまうが、実は人望や求心力・統率力・決断力などのいわゆる「人間の器」を見なければいけない。

経営者の仕事が「業績を上げる」ことから「業績を上げさせる」ことに変わる時には、大局的に人を見抜くことが必須になることを忘れてはいけない。

2011年5月23日

人事・経営編