よもやま話
経営者の個性を大事にする
ここの半年ほどで、多くの新しい経営者に出会った。
皆一様にユニークで面白い。決して完璧でないが、強烈な個性を持っておりパワフルだ。
私は数年に一度不特定多数の経営者宛に手紙を出しているのだが、今回会った10数名の経営者はそれに対して何らかのリアクション(アンケートの返信、電話、メール等)をとって来た方々だ。
話を聞いていて共通しているのが、その強烈な(または強烈過ぎる)個性がその会社のよりどころとなっているということ。そして、その個性が原因で「組織がまとまらない」もしくは「活性化していない」ということ。また、人一倍問題意識が強く常に現状に対して危機感を抱いているということ。
あるIT企業の社長は、今ある人事制度が「美しくない」という理由で相談をしに来た。その社長は1年の半分は海外を飛び回っているのだが、もともとクリエーター出身でいろいろなことに対して大きなこだわりを持っており、大変研ぎすまされたセンスを持っている。「美しくない」という独特な言葉で表現していたが、実は極めて本質的な問題提起なのだ。
またある電設会社の外国人社長は、創業メンバーの日本人役員が今の会社の実力について来ていないことを大変悩んでおり、大きなジレンマの中で困って相談に来た。会社の成長に伴って人材が成長していけば良いが、なかなかそうはいかない。経営者は会社と同じかそれ以上のスピードで変化成長するが、社員(一部役員も)は追いつかないことのほうが多い。組織も同様だ。
その会社その会社でやるべきことは様々なので簡単にはいかないが、必ずどこかに答えはあるものだ。
気をつけなければいけないことは、目先の安定や表面的にうまくいくことを重んずるあまり、折角もっている経営者の能力や感性を殺してしまうことだ。我慢していいところといけないところがある。
経営者(特にオーナー経営者)は自分の能力(魅力と言ってもいいが)を正しく理解していない人が意外と多いし、それよりもまず何のために会社をやっているかを忘れてしまうことがある。
私はよく「経営とは自分の価値観を世に問う作業だ」という言い方をするのだが、ある人は同じことを「中小企業は経営者が自分のやりたいことを実現するための場である」という言い方をしていた。
極端な言い方をすれば、我慢して嫌々やっているくらいなら会社なんてやらないほうがいい、と言える。
苛烈な競争に勝ち抜くには経営者の尖った感性や有無をいわせぬ行動力が必須で、多少の乱暴さや強引さは悪いどころか会社の大きな武器となる。
だから経営者がやりたいことを我慢しないでも組織がうまくいく環境作りが、特に中小オーナー企業にとっては将来の成長を約束する大きなカギなのだ。
ここに注力することが今の時代の経営の最優先課題なのだと思う。