市川人事労務コンサルタント事務所

よもやま話

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真贋

王が監督を辞めるそうだ。

元気ならもっと続けたいが、大病をしたこともあり体調が思わしくなく、チームの成績も上がらないため、これ以上皆に迷惑をかけられないから辞めることを決意したという。

王はデビューから今までずっと黙々と野球に取り組んできた。長島という大スターに隠れながらも素晴らしい記録を打ち立て、地味だが輝かしい野球人生を送ってきたのだ。

辞任の会見で、「チームのため、日本野球界のためなら、これからもできることは何でもやる」と言っていた。野球のために自分を犠牲にする覚悟があるのだ。王は野球を愛している。だからボロボロになるまで野球と関わってこれた。選手としても監督としても人間としても尊敬できる本物の男だ。

一方、星野も以前阪神の監督を辞めた。星野も王と同様、体調が悪くもうこれ以上できないと言って辞めた。しかしその後すぐにCMに出続け、全国を回って講演し大金を稼ぎ、あげくに「星野ジャパン」を商標登録しオリンピックの監督までやった。また、その後のことも想像し、更なるビジネスの仕掛けもしていたらしい。

星野は阪神を優勝させ、最も自分の価値の高いときに辞めた。そしてそれを利用し自分の人生設計をした。自分のために野球やオリンピックを利用したのだ。その後の顛末は、皆も知ってのとおりだ。WBCの監督もやりたがっていたが、世の中そこまで甘くない。天網恢々粗にして漏らさず、とはこのことだ。

話はさかのぼるが、星野は阪神の監督を辞めようと思った瞬間に、偽物の人生を送ることになったのではないか。昔から「選択肢が二つあるときは大変なほうを選べ」と言う。人間は弱いものだ。ギリギリで正しい道を行けるかどうかでその人の価値が決まる。

吉岡隆明の著書に「真贋」という本がある。本物と偽物のことを書いた本だが、なかなか面白い。私の経験だと、本物には共通の匂いがあり、偽物にも共通の匂いがある。

経営者は毎日様々な判断を迫られる。本質的に見えるものもあればまやかしに見えるものもある。何が本当で何が嘘か。本物と偽物を見極めることが経営者の大切な仕事の一つだろう。真贋の中には対象物だけでなく自分の心理も入っている。だから難しいのだ。

また、見極めた後は決断をする。目先の損得を捨て将来を見据え本質的に行う。そして決断は、自分に厳しく、甘えを捨て、血を吐く思いでしなければならない。

2008年9月29日

人事・経営編